【創作】 あおぞら

今、私が死んでいたとしても、世界は日常の顔をして過ぎてゆく

そんな青空だったから

煙になった人とも普通につながれる気がした

 

悲しみの儀式をして、悲しみの様式を通過しなければ

ひとでなしかもしれない

感情だけはふわふわと引っ張られるのに

涙は現実に閉じ込められる

 

隣で笑う君に、青空がうつっている

私はひとでなし

君に笑い、君と話し、君を見る

未来に向かう裏で、過去にベールをかける

 

たぶん、青空をも踏んでいる

ひとでなし

 

 

【創作】 落とし物

道端に魚の生首が一つ

こちらを眺めている

あの大きさなら鰤か

斬首された痕も顔色も

まだ 新鮮

 

生まれたての死臭が空気と同化する

猫はまだやって来ないのか

犬はいつ食べに来るのか

蟻には荷が勝ち過ぎるが

不本意なご馳走は

万年空腹の彼らを待っている

 

近付いてきたのは細く高慢な靴音

時の止まった待ち人を避けて行く

何故?

彼女は台所で製造したことがないのか

――魚の生首を

【創作】 至福

どうせ死ぬのなら自分の布団の中がいい

西よりも

東の窓から入ってくる白い神のもと

微塵の乱れもなく

お伽話の死者のように眠っていくのがよい

自殺であってはならない

生きることから死ぬことへ

植物が

光合成から呼吸へと活動を変えるように

エネルギーの向け場を変えるだけで

あればよい

何の前ぶれもなく

蝉が

その短い一生を終えるように

さして意味のない死で

あればよい

そうであってはじめて

第一発見者の方に

無よりも苦しい驚愕を与えることができる

恨みも何もないけれど

そんな情景を

幽体として見物できたなら

幽体として見物できたなら・・・・・・